昨日、何年かぶりに眼科へ行ったのですよ。そこでの出来事が忘れられないので記しておこうと思います。
それほど病気はしませんが、それなりにいろいろな病院に行った経験はあります。ここ数年で2回も引越しをしているので、それこそ病気でもないのに小児科めぐりなんかしたりもしています。なので「病院」というところがどんなところかある程度は知っていたつもりでしたが、昨日行った眼科は飛びぬけて・・・おかしい!のです。おかしいというのも「ちょっと変わってる」のではなく、「かなり面白い!」という意味で。
まず初診なので受付に並んだのですが、お客さんがなぜか私の目の前に何人も入り込み、なかなか受付をしてもらえない。その時点で何か違う雰囲気を感じ取っていました。何とか受付してもらい、待合室で座っているとテレビではオリンピック。言いづらいのですが、オリンピックが始まっていたのは知っていましたが、今回はじめてみました。なんせテレビをつける習慣がないのでついつい見逃して、すっかり出遅れています。と、その話はおいといて。隣のおばさんがなぜか私に肩をぶつけてくる。え~?なんなのー?と思いながらずりずりっと横にずれると、どうやらテレビでやっているオリンピックが気になってもっとよく見たいので自然と体が寄ってきたみたい。そして後ろの席からもなぜか私は頭をごつんとやられたり(故意ではなく)してやっと気付きました。私は皆がテレビを見るために狙っていた一番良い席に座っていたらしい。とりあえずトイレに行くふりをして立ち上がると早速名前を呼ばれました。ホっとして診察室に行くと、今度はまたギョッとする世界。眼科のお姉さん(なんて呼ぶのだろう。看護婦さんでもないし、医師でもないし、とにかく助手のような人たち)がわんさかいるのです。何人いるか数える心の余裕はありませんでした。背の高いひょろーっとした人、かなり縦にも横にも大きな人、とても小さくて可愛い人からお化粧がちょっと濃すぎる怖そうなお姉さん、首にタオルを豪快に巻いたお姉さん・・・。皆忙しそうにバタバタしていました。座ったり、移動したり、言われたとおりに診察室内をコロコロと動かされ、「じゃぁココに座って!」と座らされたところでドライアイの検査。麻酔の目薬をした後に小さな紙を両目に挟まれ、「目、閉じてた方がいいわよ」と言われて閉じてからがホラー体験のようでした。
いきなり近くのお姉さんが「うっそやろぉ!」と叫びました。ビクっとした自分が恥ずかしくて小さくなって必死に目を閉じていました。次にまた同じ人が「アカン!!もうダメやわ~」とまた叫ぶ。なんなの?なにごと?と耳をすませていたのですが、他の人たちも何やら大騒ぎ。「あの人や、つかまえてこやぁ!」とか「ハセガワさんよ!どこ行ったん!?」とか、「もうアカン、あ~アカンて。」・・・。私は悪くないよね、何かしたかな、とりあえず目閉じて聞き耳を立てていると、どうやら「ハセガワさん」というおじさんが診察の途中で消えて(帰って)しまい、視力検査の途中だったメガネだけがそこに残されていた、らしいと話の全容が明らかになってきました。突然シーンとなったので不安になり少し目を開けると、怖そうなお姉さんがボールペンをカチカチカチカチやりながら小さな声でブツブツつぶやいています。その音が響き渡りやっと私も落ち着いて目を閉じていられると思っていたら、目の前で目覚ましのような大音量で「ピピピピピ!!!」。あんまりびっくりしておそらくイスからおしりが浮きました。それは私の検査が終わったという合図らしく、そんなものが鳴るなんて知らなかった。ひとりであせっている私に微笑んでくれる天使はそこに誰一人としていませんでした。この目を閉じていたたった5分の恐怖の後、今度は不可解な事件が。
本物の(?)先生に別室で診察をしてもらった後、またこの大所帯の大部屋に移され、「まつなみさん、ここ座っとって!」と言われたまま誰も私にかまってくれない。私のカルテが無造作に目の前の机に置かれたまま、数分が過ぎて3人のお姉さんA,B,Cが集まってきました。私に聞こえないようにするでもなく、私のカルテをボールペンでポンポンたたき、「これ、どうなーっとんの?」「○○さんまたいなくなった」「まったくどーすんの」と何やら秘密会議のような悪口が。これまた私の小さな脳みそで推理をすると、私の担当だったお姉さんDはどうやらすぐに仕事を放棄して消えるらしい。すぐに人が消える病院だ。仕方なく秘密会議を終わらせると、すっかり優しく変身したお姉さんAが「おまたせしました~。じゃ、このコンタクトレンズつけられるかな?」と。手伝ってくれようとしましたが、なんせ私は小学5年生からコンタクト。サっと自分で両目つけると「あらっすごいわねぇ」とまた一段と高い声。そしてよく周りを見渡すと・・・見えない!「遠くが見えません」と言うと今度はそこに数人加わってまたひそひそと秘密会議。そこへタイミングよく(?)もともとの私の担当だったお姉さんDが現れる!「あら、間違えてましたぁ?」の一言に空気が凍りつくのを私は見逃しませんでしたよ。あまりに面白くてふきだすのを我慢するのがやっとでした。ぷるぷる怒りで震える声でお姉さんAが「どこ行ってたんですか、さっき検査したはずの視力と全然違うコンタクト出してましたよー」と、うその笑顔。私は状況が飲み込めたので、さっさと水道に言ってコンタクトをとって待っていました。その後は何事もなかったように新しいコンタクトレンズを出してくれて、お姉さんABCD皆さんが気持ち悪いほど私に優しくしてくれました。
ハッと気付けば患者は私ひとり。あいかわらず待合室のテレビではオリンピックの体操が放映されているというのに、ガラーンとして誰もいない。でもおかしい。あの大部屋ではたった今までたくさんの人がバタバタしていたはずなのに。座らされる場所、いろいろなところに誰かしらのカルテが置いたままにされていたのに。しかも最後に座った席にはさっきのストップウォッチのタイマーが残り時間3分で動いたままだった。
・・・会計を無事にすませて外に出て、もしかして振り向いたらそこには眼科なんてなかったんじゃないかという妄想が膨み、振り返ることができませんでした。
これほどの個人情報のずさんな管理、スタッフのひどい態度、ありえないミスなどがあったにもかかわらず「面白かった」のは、それぞれが全て中途半端ではなかったから(笑)。どれもこれも度が過ぎていて、普通ならもう二度と行かない!と思うところ、私には「また行ってみたい」眼科となりました。それにしても、眼科の人たちも変わっていたけど、患者さんたちもどこか違う世界の人たちのような・・・。オリンピックという麻薬に染まってしまったように一言も話さずテレビに釘付けでした。果たしてまた行った時、そこにあの眼科が存在しているだろうか。心配です。